IR情報経営方針トップメッセージ

小林 和也
当社グループを取り巻く事業環境は不透明な状況が続いておりますが、主力の半導体分野を中心に業績が好調に推移し、2025年3月期は売上および利益ともに過去最高を更新いたしました。引き続き、長期的な成長が見込まれるトレンドに対して、未来を見据えた戦略的な投資と人財強化を進めており、一層の企業価値向上を目指してまいります。つきましては、2025年3月期の業績と今後の経営の方向性について、ご説明申しあげます。
半導体分野が業績を牽引し売上・利益ともに過去最高を達成
2025年3月期は、半導体市場の回復にともない、半導体製造装置の旺盛な需要に支えられ、当社グループでは国内外ともに生産拠点の稼働率が高い水準で推移しました。半導体以外の各分野も堅調に推移したものの、最も好調に推移したのは半導体・FPD分野で、前年同期比で大幅な伸長を示した結果、当社の連結業績は売上542億円、経常利益125億円と過去最高を記録しました。
もっとも、創業以来、当社グループにとって重要である鉄鋼分野においては、国内市場は比較的堅調だったのに対して、海外市場における価格競争の激化や需要構造の変化により、厳しい局面が見られました。とりわけ、東南アジアや中国市場では、コストパフォーマンスを前面に押し出した競合企業の台頭により、従来の高級鋼板の需要が圧迫されるなど、当社グループの海外子会社においても一定の影響を受けました。
しかしながら、当社グループは安価な量産品ではなく、技術的付加価値の高い製品で勝負するという姿勢を崩すことなく、最先端の技術で差別化を図りながら、着実に信頼と受注を積み重ねる中で業績を向上させています。そして、海外市場の開拓が順調に進んでおり、2025年3月期の業績として海外子会社の売上が初めて90億円を突破しました。
今後、表面改質の分野においても海外勢の追い上げが想定される中で、コスト競争力の強化とともに、これまで以上に技術革新の追求による最先端の機能皮膜の提供に注力していく考えです。併せて、海外展開が進む中でそれぞれの地域のニーズに即した適切なソリューションの提供に努めてまいります。
目標を前倒しで達成、次なる飛躍に向けた投資と技術開発を推進
当社は2026年3月期を最終年度とする中期経営計画のもと、重要テーマの取り組みを着実に実行しています。最終年度(2026年3月期)に掲げていた業績目標を一年前倒しでクリアすることができました。
既存事業の状況については、冒頭で申しました半導体・FPD分野の伸長が顕著です。中でも、半導体の新たなトレンドに対応したソリューションがさらに拡大していくものと見込んでいます。
加えて、エネルギーや航空宇宙の分野でも大きな成長につながる案件が増えています。
当社グループに対するニーズが拡大基調にある中、2025年度には北九州および東京に新工場の建設を着工するなど、中長期的な供給能力の強化を着実に進めております。
また、技術開発面では、子会社の日本コーティングセンター株式会社との連携強化により、溶射に代わる表面改質技術であるPVD薄膜開発および当社オリジナルのSDC溶射の大型製造装置の導入などの取り組みを進めています。
これら技術を半導体の製造装置メーカー様、又半導体分野以外のエネルギーや医療分野の新事業への応用も視野に入れ、当社が培ってきた表面改質のコア技術を多様な業界で活用していく考えです。
さらに、この度の定時株主総会に取締役会の新たな役員体制を提案しています。この中では技術に強い役員2名を加え、これからの成長戦略を加速させていく布陣としました。
当社グループでは、2030年に向けた売上成長イメージとして連結売上800億円以上(単体600億円以上)を掲げています。これを前提に毎年4%の賃上げを織り込んだ企業成長モデルを策定しました。併せて、この成長モデルに基づき、経済産業省から補助金を得ています。2026年度以降の新たな中期経営計画ではこの成長見通しを具現化していくための施策を公表する予定です。
2026年3月期の見通し
2026年3月期につきましては、主要国における関税政策の動向や地政学リスク、景気の減速懸念を踏まえ、慎重な見通しを立てています。売上高については引き続き成長を見込んでいるものの、利益については設備投資の実施や人件費の増加もあり、若干の増益計画としております。
もっとも、半導体業界では中長期での需要拡大シナリオが維持されています。当社としては、このトレンドに乗り遅れることなく、成長曲線に確実に追随できるように生産キャパシティの前倒し整備を進めています。前述の北九州および東京の工場建設を含めた総額110億円超の大型投資は、将来の供給責任を果たす上でも極めて重要であり、今後もメリハリある投資判断を徹底してまいります。
今後も当社は、ものづくりの根幹を支える表面改質技術の深化とそれを実現する人財の力を信じて、持続的な企業価値の向上を目指してまいります。2025年3月には「マルチステークホルダー方針」を更新しましたが、従業員への還元や取引先への配慮についてこれまで以上に取り組んでまいります。そして、人的資本やパートナーシップの視点からも多様性に富んだ経営を実践してまいります。
2025年3月期の成果は、株主の皆さまの温かいご支援があってこそのものと深く感謝申しあげます。今後とも変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、お願い申しあげます。